従来、クロム酸や過マンガン酸などの強力なエッチング液を使用し、プラスチック表面を粗化することにより、アンカー効果で高い密着性を得ていましたが、
オゾン濃度1.5ppmのオゾンナノバブル水に浸漬し、
樹脂表面を改質することで密着性の高いめっきを行うことが可能になります。
この装置はオゾン水をナノバブル化することで 低いオゾン濃度でも、
既存のクロム酸エッチング液に替わる安全で環境に優しい前処理工程を開発したしました。
(プラスチックの種類により処理条件が異なります。)
※オプション装置が含まれています。
ナノメートルサイズのオゾンの気泡を水中に生成し、ナノバブルオゾン水を製造。
オゾンを含む大量の小さな気泡が母材の表面に付着した際に表面に強力な酸化をすることで、改質され、密着強度の高いめっきを得ることが出来ます。
既に40ppm程度のオゾン水を利用し、樹脂表面を改質する手法が開発されていますが、高濃度のオゾンによる化学反応で母材が劣化するデメリットや、作業環境が危険なものとなっていました。
現在、電子機器の小型化や高性能化が進み、微細配線形成の要求や、ロスの少ない高周波伝送ができる基板への要望が高まっています。
そのためには基板表面の粗度を低くし、伝送ロスを軽減しなければなりません。
オゾンナノバブルによる樹脂改質は2-5ナノ程度のの微小なアンカー構造が形成され、 深さ方向も100ナノ以下であるため、 顕微鏡レベルで観察しても鏡面状態であることから高周波が表面層を通る際にもロスが大幅に軽減されます。
オゾンナノバブル水(O³:1.5ppm) 拡大
関東学院大学 材料・表面工学研究所では、従来の樹脂めっきに用いられるエッチング剤であるクロム酸や過マンガン酸の代替として、強力な酸化力を持つオゾンを、ファインバブルとして水中に1.5-2ppm溶存させ、樹脂表面をナノメートルオーダーで改質可能です。
使用後、オゾンは酸素へと分解するため、エッチング液の回収や廃棄処理が無くなります。
TEMによる断面観察
ABS樹脂 ポリイミド樹脂AFMによる処理前後の表面観察
ABS樹脂の従来法との表面比較
樹脂めっきは自動車部品や水栓金具など、私達の身の回りで幅広く使われています。
従来の樹脂めっきはクロム酸エッチングにより樹脂表面に繊細な凸凹を形成することでめっき皮膜の密着性を確保しています。
しかし、クロム酸エッチング液には人体に有害な6価クロムが含まれるため、欧州ELV指令/RoHS指令によりその使用が厳しく制限されて
国内でも水質汚濁防止などにより排水基準が設定されて、使用者は多大なコストをかけて処理しています。
現在、関東学院大学材料・表面工学研究所様が開発したクロム酸エッチングに代わる樹脂めっきの密着促進処理方法である、低濃度(1~2ppm)Fblowシステムを用いた樹脂表面の改質処理法(図2)の実用化を目指しています。
Fblowシステムは、樹脂素材の表面に平均粒径0.1~100μmのオゾンの微細気泡を含むオゾン水を接触することで、クロム酸エッチングを行うことなくめっき皮膜の密着性を確保する、排水処理を低減した環境に配慮した工法です。
オゾン処理にファインバブルを使用する利点の一つは気体の溶解能力の高さにあります。
オゾンは常温常圧下では気体であるため、水中で作用させるためにはこれを溶解させる必要があります。
従来のオゾンを単純に水に溶解する方法では液中でのオゾンの生存時間が短いため、オゾン濃度を高くしなければならないなどの課題があり、実用化には至っていません。
しかし、ファインバブルは通常の気泡とは異なり、水中で縮小して最終的には消滅(圧壊)する特性をもつため、バブルの中にオゾンを導入することで圧壊時に強力な酸化力をもつ水酸基ラジカルを発生する。
それが改質に大きく寄与することもオゾンの低濃度化が実現した理由の一つです。
ABS樹脂材料に対する本プロセスの処理工程(電気銅めっきまで)を図3に示す。
従来の工程に対して大幅な工程変更がなく処理することが可能である。
今まで推奨されたオゾンファインバブル工程では、オゾン濃度を2.0ppmで処理を行い、触媒の吸着量を増やすためにコンディショナーを用いていたが、素材起因によるピット状の外観不良が発生(図4)。
そこで、オゾン濃度を5ppmにし、各工程の処理条件を再検討することにより、コンディショナー工程を省き、問題となっていた外観不良も大幅に改善することができた(図5)。
また、密着強度(ピール強度)は、タフエースR(住友ベークライト(株)製ABS樹脂)で、0.6~1.0kN/mの密着強度が得られている。
次に従来の処理(オゾン濃度1.5~2.0ppm)を30分と120分行い、改質層へのPd浸透層の確認をするために触媒付与工程を6回繰り返し、ULV-SEM(Ultra Low Voltage-SEM)を用いた断面観察を行った(図6、図7)。
30分処理については樹脂表面に形成したPd皮膜とは異なる浸透したPd粒子の存在がわずかではあるが確認できた。
また、120分処理についてはコントラストが樹脂表面から下方にいくほど弱くなっていることから、改質上部からPdが浸透し、触媒浸透層を形成したと考えれれる。
この触媒浸透層によりめっき皮膜と樹脂との密着強度が得られていると推測できます。
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